新構造材料技術研究組合(ISMA)は、2017年1月23日、イイノホール(東京都千代田区)で、3回目となる革新的新構造材料等研究開発「平成28年度成果報告会」を開催しました。経済産業省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、組合員、再委託機関のほか、構造材料の研究開発に関心を持つ企業や研究機関、大学などから、395名の参加を得ました。
報告会冒頭、当組合の岸輝雄理事長が開会挨拶に立ち、事業概要と材料開発について説明した後、今後の方向性として、腐食、水素脆性、疲労などに力を入れると同時に、コストやLCA、リサイクルなどの研究にも取り組んでいく必要性を語りました。また計測と計算科学を取り入れ、研究開発を加速化するとともに、プロジェクト終了後も研究データを保存・有効活用できるよう、中立機関による拠点づくりに着手していきたいと述べました。
続いて、経済産業省産業技術環境局の末松広行局長にご来賓挨拶、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の佐藤晃嘉理事に共催挨拶を賜りました。
その後、株式会社本田技術研究所四輪R&Dセンター上席研究員の東雄一氏による「自動車技術を支える材料技術への期待」と題した特別講演が行われました。東氏は自動車メーカーの立場から、車体軽量化の重要性やその達成手法、マルチマテリアル化技術の潮流などについて解説し、材料と接合技術の開発が一体的に進められている当プロジェクトに期待を寄せました。
午後には、東京大学大学院工学研究科マテリアル工学専攻教授の榎学氏が「内閣府:SIP『革新的構造材料』におけるマテリアルズ・インテグレーション(MI)への挑戦」と題した特別講演を行いました。榎氏はMIに関するビデオ上映の後で、MIシステムの仕組みを組織予測システム、性能予測システム、特性空間分析システムに分けて説明し、将来的には材料開発の専門家でなくても簡単な操作で使えるシステムになると語りました。
「革新的新構造材料等研究開発」分担研による成果報告は、「革新鋼板の開発」3件、「熱可塑性CFRPの開発」・「革新炭素繊維基盤技術開発」3件、「革新的アルミニウム材の開発」3件、「革新的チタン材の開発」2件、「革新的マグネシウム材の開発」6件、「接合技術開発」8件が行われました。
組合本部からは「海外動向調査」を報告しました。米国編は、米国エネルギー省の資金提供を受けている研究とISMA事業を比較しました。欧州編は、欧州最大規模の自動車構造展示会「Joining in Car Body Engineering」における欧米の最新車に使用されている構造材料と接合技術の動向と、英国TWI(接合・溶接研究所)による接合技術の調査結果の概要を説明しました。
報告会のまとめとして4分野のコーディネーターが、これまでの研究成果と今後の展望を語りました。鉄鋼については大村孝仁氏(国立研究開発法人物質材料研究機構)、CFRPについては武田展雄(国立大学法人東京大学)氏、非鉄に関しては吉澤友一氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、接合に関しては平田好則(ISMAフェロー)が発表しました。最後に当組合の吉田泰専務理事が閉会挨拶を行い、オーラルセッションを締めくくりました。
オーラルセッションと並行して、カンファセンスセンターのルームAでポスターセッションを開催しました。合計33テーマに上るポスターが掲載され、コアタイムには、ご来場者と各テーマの研究者が活発に討議を行いました。