データ等活用拠点の構築

2013年10⽉に発足した新構造材料技術研究組合(ISMA)は、2023年2月末を以て10年に及ぶ革新的新構造材料等研究開発プロジェクトを終える予定です。これにあたり、集積してきた研究開発データ等を散逸させることなく、ISMA解散後も研究活動で活かしていただくための仕組みづくりが重要です。
本活動では、とくに複数企業による共有・相互利用が望ましい共通基盤的な技術やデータ、データ構造を集約して提供し、規格化・国際標準化に向けた戦略的な検討や人材育成を行っていくための体制整備を推進します。

マルチマテリアル連携研究ハブ(仮称)

これまでのプロジェクトで育んだ研究分野別拠点のうち下図の8拠点に対して、本プロジェクト最大の特徴である異分野連携の維持と発展のために、各拠点をつなぐ横串機能を設置します。具体的には、「マルチマテリアル連携研究ハブ」(仮称)として国立研究開発法人産業技術総合研究所 マルチマテリアル研究部門に整備し、企業等からのお問い合わせ窓口をワンストップ化したり、新たな国家プロジェクトの立上げなどを行う予定です。これらを通じて、自動車関連産業の実用化研究の加速、プロジェクト参加機関以外の企業、大学、国立研究所等や他分野のマルチマテリアル技術の橋渡し・横展開を図ります。

データ等活用拠点の概要

データ等活用拠点の概要

① 非鉄信頼性評価拠点(産業技術総合研究所 中部センター)

非鉄材料(マグネシウム合金、アルミニウム合金、CFRP)を輸送機器部材に利用する際に必要となる、長期性能(疲労特性、耐食性等)を系統的に評価・解析するための技術を構築するとともに、評価設備の整備を進めています。今後は、これまでに構築した技術・設備を活用し、ISMA事業で得られた技術シーズを実用化するための研究開発を、関連機関と共同で進めるための拠点機能を担います。また、新規国家プロジェクトに向けたシーズ創出を進めます。

 

② 接着技術拠点(産業技術総合研究所 つくばセンター)

構造体接合法として実装できる信頼性の高い接着技術を確立することを目的として、接着メカニズムの解明と接着剤、強度・耐久性評価法、表面処理法、接合部検査手法を開発しています。今後は、分析技術、強度評価技術、検査技術、予測設計技術、接着剤開発、表面処理技術といった多岐にわたる接着に関する技術課題を多機関で連携して解決する接着研究拠点を構築します。

③ 量子ビーム計測拠点(産業技術総合研究所 つくばセンター)※量子ビームについて

革新鋼板、非鉄金属材料、CFRPなどの複合材料、および、それらの接合・接着の高度化に資する基盤技術を中心にマルチマテリアル製品開発に有効な中性子ビームによる計測手法を発展させています。今後は、下記の小型中性子源施設3箇所(産業技術総合研究所、理化学研究所、北海道大学)と大型中性子源(J-Parc)による「目的に応じた中性子利用」のネットワークを構築し、簡便・迅速な測定環境を実現します。

主な小型中性子線解析設備:

  1. 産総研中性子解析施設AISTANS
    (Analytical facility for Industrial Science and Technology using Accelerator based Neutron Source)
  2. 加速器駆動パルス中性子源HUNS
    (Hokkaido University Neutron Source(s))

 

④ LCA評価技術拠点(産業技術総合研究所 つくばセンター)※LCAについて

材料代替効果を定量的に求めることを目的として、材料の物質フローやリサイクル性なども加味した材料のライフサイクル全体を評価できる手法の構築とその手法を研究開発現場で活用可能な評価ツールを開発しています。また、同ツールのβ版をISMA組合員に提供することでサプライヤーとユーザーそれぞれの立場からフィードバックを得ながら改良も行っています。2022年度中には今後の材料代替効果の定量方法を示し、今後は、開発した定量手法の実用化を目指し、事業参加機関以外の企業も視野に入れ、共同研究・共同開発の実現を図ります。さらに、新たな国家プロジェクトの立案に向けた活動を行います。

⑤ 接合技術拠点(大阪大学)※接合技術について

これまでの成果であるプロセス技術(新規接合法の開発、接合メカニズムの解明)、評価・解析技術(継手特性評価、その場観察による現象解析)のまとめとデータ集積、活用手段の整備を行っています。また、コンテンツライブラリ-<http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/~jthub/>を開設しており、今後も引き続き、下記の接合装置、分析装置群を用いた技術共同開発のために、企業との共同研究・共同開発・スタートアップフォロー窓口を担います。さらに、事業参加機関や事業参加機関以外の企業とも協働研究所・共同研究講座の設置を模索し、シーズ技術の実用化を図ります。

  1. 低温線形摩擦接合装置(低温LFW)
  2. フラット摩擦攪拌装置
  3. 異材接合用線形摩擦接合装置
  4. メゾ・マイクロスケール異材接合部観察・分析装置
  5. IN-Situ SEM FIB内ナノメカニカル評価装置
  6. ナノレベル異材接合部観察・分析・評価装置
接合技術拠点における成果のデータ活用に向けた取り組み接合技術拠点における成果のデータ活用に向けた取り組み

接合技術拠点における成果のデータ活用に向けた取り組み

 

⑥ 鉄鋼信頼性評価拠点(物質・材料研究機構)※腐食と水素脆化の解析・評価について

力学特性測定評価のための共通設備として、水素脆化評価試験に必要な機器を一室に整え、高効率にデータ取得を行える環境を作っています。また、腐食-水素基礎データ取得のための共通設備として、種々の環境下での系統的な水素拡散侵入データ取得のための環境整備も行っています。今後は、高強度鋼の水素脆化と腐食を主な対象とし、新たな国家プロジェクトの立案に向けたソフトとハードを整備します。さらに、専門人材・技術者の育成と確保を行い、高強度鋼における水素脆化と腐食関連の最新マテリアルデータの収集と高強度鋼の水素脆化と腐食関連の国内主要研究機関との連携体制を構築します。

⑦ CFRP信頼性評価拠点(名古屋大学ナショナルコンポジットセンター)※熱可塑性CFRPについて

CFRTP技術の実用化と高度化を目指した研究開発に加えて、企業による実用化への支援およびその人材育成等の機能を有する拠点の体制について検討しています。また、CFRTP研究開発成果のデータベース構築と利活用に向けて、他機関との連携の仕組みやデータベース活用システムの構築とデータ整備を進めています。今後は、構築したシステムおよびデータを拡充するとともに、世界にリードする先進研究の推進、企業に対する継続的な実用化支援および人材育成を軸とした拠点体制を構築します。

⑧ 構造設計技術基盤拠点(京都大学)

これまで得られた成果の社会還元に向けて、マルチマテリアルトポロジー最適設計法とCAE評価に関するソフトウェアとデータベースの整備、そして組織としての普及・発展の体制づくりを進めています。今後は、開発したシステムおよびCAEデータの提供を行います。さらに、CAEシステム開発会社、自動車技術会、自動車および関連会社等で構成されるコンソーシアムを設立して、定期的情報発信を行います。

京都大学でのオープンスペースラボ構想

京都大学でのオープンスペースラボ構想

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